今の会社が辛くて辞めたい、またはもっと良い条件の会社に転職したい、そう考えると気になりだすのが退職金ではないでしょうか?勤続年数が長く、定年まで働くと当然もらえるものと考えますが、勤続年数が4年や5年となると退職金が出るのか心配になるはずです。
結論を先に言えば、勤続年数が3年以上になると退職金が出る企業が多いので、あなたももらえる可能性は高いでしょう。ただし、企業によって退職金制度に違いがあるので、100%もらえるわけではありません。
ここでは、勤続年数が4~5年で退職を考えている人へ、退職金の基本や短期離職者でも支給されるのかどうか、また支給される場合はいくらが相場で、いつ頃支給されるのかをご紹介します。
転職を考えているなら、賢くスムーズに次の会社に移れるよう、退職金のことを把握しておきましょう。
退職金の基本
退職金とは、会社を辞めるときにもらえるお金のことですが、これは労働基準法で定められているわけではありません。企業にとって、退職金の支給は義務ではないので、すべての会社が退職金を出すわけではありません。
会社次第で退職金が支給されるかどうかは変わりますが、まずは退職金についての基礎を把握しておきましょう。
あなたの会社に退職金のことを問い合わせるにしても、基本を理解していないと話がスムーズに進みません。転職や退職を検討していて、その中で退職金についての悩みが出てきたら、ここをチェックしてください。
退職金の種類は大きき分けて3つ
退職金には大きく分けて「退職一時金制度」「退職年金制度」「前払い制度」の3つがあります。私たちが一般的に退職金と呼んでいるのは、退職するときにまとまった金額がもらえる退職一時金です。
この制度は、すべての企業が取り入れているわけではなく、どれか1つもしくは2つの制度を導入している企業や、そもそも退職金制度も導入していない企業もあります。ですから、退職金を当てにして転職をすると、こんなはずではなかったという事態に陥ることもあるので注意しましょう。
転職するなら退職金制度は要確認
転職や退職をするなら、事前に退職金制度について調べる必要があります。
厚生労働省が発表している、平成30年就労条件総合調査では退職金制度を導入している企業の割合は、次のようになっています。
企業の従業員数 | 退職給付制度のある企業割合 |
1,000人以上 | 92.3% |
300~999人 | 91.8% |
100~299人 | 84.9% |
30~99人 | 77.6% |
一覧を見ると、会社の規模が大きいほど退職金制度を導入しているところが多く、中小企業になると少なくなるという傾向にあります。
また、職種でも大きな差があり、退職金制度の導入率の多い企業には、郵便局などの複数サービス事業が96.1%に対して、導入割合が少ないのは宿泊業や飲食サービス業で59.7%となっています。
企業によってこれだけ違うので、あなたの勤めている会社が退職金制度を導入しているかどうか、また内容はどうなっているのかは、実際に調べなくてはいけません。
退職金の疑問
入社するときは、誰でも退職のことまで考えていないので、退職金制度があるかどうかを調べて入社を決めることは少ないでしょう。しかし、転職や退職が頭をよぎり始めると、今後のことを考えて退職金のことが気になり始めるのは当然です。
特に、勤続年数が4~5年程度と浅い場合は、そもそも退職金がもらえないと思っている人もたくさんいるでしょう。
退職金について気になり始めたら、まずはここで疑問を解消しておきましょう。
退職金制度がある
退職金は、勤めている会社に退職金制度がなければ、何年勤めていてももらえません。逆に、会社の制度によっては1年で一部支給されるところもあれば、3年や5年以上との規定を設けて退職金を支給する企業もあります。
要は、退職金には法的な規定がないので、勤続年数が4年ほどで支給されるかどうかは、あなたが現在勤めている会社次第ということです。
これを確かめるには、入社したときに渡された労働条件通知書に記載されているはずなのでチェックしてみてください。労働条件通知書を渡すのは企業に義務付けされていますが、中小企業では残念ながら徹底されていないこともあります。
その場合は、信頼できる勤続年数の長い人に、退職金について聞いてみるといいでしょう。転職を真剣に考えているなら、相談した相手に退社することを悟られて、トラブルにならないように気を付けてください。
勤続年数との関係性
一般的に、多くの企業は勤続年数が3年以下の社員に対しては、退職金を支給しないことが多いようです。企業によっては例外もあるので、やはり会社次第ということになります。
あなたの会社の退職金制度を確認して、勤続年数の規定があればそれをクリアーしてから転職を考える方が賢明でしょう。例えば、あなたの勤続年数が4年で、会社の退職金制度が勤続年数5年以上から退職金が出るという規定だとします。そうであれば、1年じっくり転職先を検討する時間を設けて、5年以上勤めてから退職した方が有利です。
ただし転職の場合は、あなたの年齢が若い方が有利になることもあるので、その辺も考慮して、退職金だけを視野に入れて転職時期を決めないようにしましょう。長い目で見て、あなたにとってどちらが有益か考えてください。
懲戒解雇だと退職金はくれません
退職金は、自己都合や会社都合の退職であれば支給されますが、懲戒解雇になると支給されません。
懲戒解雇になる事例としては、次のようなものがあります。
- 犯罪行為をした場合
- 長期間、または度重なる無断欠勤
- 悪質なセクハラやパワハラ
これらは、かなり悪質でない限り懲戒免職になることはありません。普通の生活や仕事をしていれば、それほど心配することはありませんが、注意したいのが飲酒運転などの犯罪や無断欠勤などです。
飲酒運転に対して、世間の目はかなり厳しくなっているので、会社の信頼を大きく損ねる行為になります。特に、社用車などで飲酒運転をすると一発でアウトになるでしょう。
また、会社を辞めたいからといって、正当な理由もなく長期間無断欠勤をするのも、懲戒免職になってしまうことがあります。退職金を受け取り、できるだけスムーズに退職したいなら、無断欠勤などはしないようにしてください。
退職を考えているときは、つい気持ちが散漫になってしまいがちなので、懲戒免職になるようなことだけは避けましょう。
退職金の相場
退職金については、企業で規定が違うので相場を出すのは非常に難しいものです。平成30年度の東京都産業労働局のデータ(中小企業が対象)を参考に、勤続年数4年で退職した場合の退職金を計算すると、約40万円弱となります。この金額は、あくまでも参考程度だと思ってください。
退職金の相場を算出するには、次のような計算式が用いられるのが一般的です。
退社時の基本給×就業年数×給付率=退職金
他にも、基本給×一定率という会社もありますし、他の手当を追加して支払う企業もあります。個人経営の会社であれば、難しい計算式ではなくざっくりと〇万円と渡されるケースも実際には未だにあるでしょう。
周囲の人がもらった退職金を参考にすると、当てが外れることもあるので企業によってかなり違いがあることは理解してください。
退職金は非課税である
退職金は、会社が社員に対しての功労に対して支払うため、純粋な所得とは税金の面での扱いが異なります。一般的な給与の課税方法とは違い、退職所得控除額を出して税金を算出します。計算には、次のような式を使用します。
勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数=退職所得控除額
上記の計算だと、勤続年数4年では160万円、5年なら200万円が控除額となります。勤続年数が浅い場合は、こんなに退職金をもらえる会社は稀なので、控除額内であることがほとんどです。
念のため、退職所得金額を算出する場合の計算式を見てみると、次のようになります。
(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額
あなたが勤続年数4年で、退職金として40万円もらったとすれば、(40万円-160万円)×1/2となるので、退職所得はゼロで非課税になります。
退職する際には、「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、会社が支給額から税金を引いた額を支給してくれます。この場合、195万円以下なら控除額は0円になります。
ただし、申告書の提出がなければ、20.42%の所得税がかかるので確定申告にて清算しなくてはいけません。勤続年数が少ない場合は、それほど神経質にならなくても、損をするほどの額にならないことが多いです。心配な場合は、退職時に会社に聞いてみるといいでしょう。
退職金が支給されるタイミング
退職金は、企業でそれぞれ規定が異なるので、支払うタイミングも違います。多くの企業は、退職した翌月~翌々月に支払われますが、退職金を生活費などの当てにしている場合は、支給されるタイミングを会社に確認しましょう。
また、支給はこれまで給与振込されていた口座に支払われるのが一般的です。
まとめ
5年以下の短期離職をする場合は、退職金はあまり当てにできません。もらえることを前提に転職を決めると後々生活に困ることもあるので、転職前には最低でも3か月程度、理想は1年程度無給でも生活できる貯金をしておくと安心です。